最高裁判所第一小法廷 昭和47年(オ)555号 判決 1973年3月01日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人竹内靖雄の上告理由について。
甲第三号証の作成は、新たな契約書ひな型に基づいて契約書をとり直したにすぎず、これによつて原判示(イ)の契約の効力を失わしめる趣旨のものではなかつた旨の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠に照らして肯認することができ、右認定判断の過程に所論の違法はない。論旨は採用することができない。
上告代理人中塚正信の上告理由について。
論旨は、本件証書貸付の残額一六〇万円の請求につき訴を却下すべき旨を主張するが、金銭債権につき執行力ある公正証書が作成されている場合でも、請求権の存在が既判力をもつて確定されているわけではないから、同一債権につきさらに給付の訴を提起する利益があるものと解すべきである。そして、原判示(イ)の契約は、甲第二号証または甲第三号証の作成によつて効力を失つたものではなく、また、右契約において、保証人に対する関係における債権者の担保保存義務を免除し、保証人が民法五〇四条により享受すべき利益をあらかじめ放棄する旨を定めた特約は有効であり、本件の事実関係のもとにおいて、第一審原告勝山信用金庫が右特約を援用することを妨げられるものでもないとし、右一六〇万円の請求を認容すべきものとした原審の認定判断は、正当として是認することができ、右認定判断に所論の違法はない。その余の論旨は、上告人らの勝訴部分について原判決の理由に不服をいい、あるいは原判決を正解しないでこれを非難するものであつて、論旨はすべて採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岸 盛一 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸上康夫)